死なないあたしの恋物語
当時は木製の下駄箱だったけれど、今はステンレスのものに変わっていて、個々に扉までついている。


開けっぱなしの木製の下駄箱も好きだったけれど、蓋つきのものにも憧れていたあたしはつい笑顔になった。


今まで500年ほど生きてきたけれど、日々の変化は本当にめまぐるしくて忙しい。


だからこそ、去年の自分のように海外へ行ってのんびりとした生活をするときもある。


あたしが不老不死の体になったのは13歳の頃。


その時代にはまだまだ占いや魔術と言ったものへの信仰心が強くて、子供が生まれればシャーマンみたいな人が呼ばれてその子の未来を予言したり、幸せを祈ったりするのが珍しくなかった。


その名残は現代でも残っているけれど、もっとライトな感じで占いとか、おみくじというものに変化している。


そのくらい昔に生まれたあたしは、ことあるごとにシャーマンだの陰陽師だのといった人たちと関わることが多かった。


あたしの両親がそういう信仰心がかなり強かったことが原因だと思う。


そんなときに両親が流行病にかかってしまった。


町でも有名な祈祷師が立ち向かっても歯も立たないくらいの病。


現代で言えば、祈る前に薬を開発するのだろうけれど、当時はそうじゃなかったんだから仕方ない。


両親が行きも絶え絶えになったとき、1人の怪しい男を家に連れてきた。


あたしはその男を今でも胡散臭いと思うんだけど、両親はとても真剣だった。


「この子だけは病気にかからないようにしてください」


と、その人にお願いした。
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