死なないあたしの恋物語
2人とはまだ会話をしたことがなかったはずだ。


そう思っていたとき、ふと昨日の記憶がよみがえってきた。


そういえばこの2人昨日サッカーの試合を見に来ていなかった?


他の人たちをあまり意識して見ていなかったけれど、記憶の片隅にこの2人の顔が浮かんでくる。


「そういえば2人とも、昨日サッカーを見に来てた?」


聞くと、2人は同時に目を見交わせなぜか慌てた様子で「行くわけないじゃん」と、否定してきた。


けれど目は泳いでいるし、リアクションはオーバーだし、明らかに嘘をついている。


どうして嘘なんかつく必要があるんだろう?


首をかしげていると、雅子さんはあたしの机を叩いてきた。


バンッと大きな音がして思わず体が震えた。


「そんなことどうでもいいから。それよりあたしたち、浅海さんに確認したいことがあるんだよね」


たれ目だけど迫力のある声で雅子さんが言う。


その顔はどこか怒っているように見えて、たじろいだ。


あたし、なにかしちゃったのかな?


せっかく中学校生活を満喫しようと決めたのに、クラスメートを怒らせてしまったら本末転倒だ。
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