死なないあたしの恋物語
☆☆☆

学校へ向かう足取りは重たかった。


できれば行きたくないと心が叫んでいる。


実際にこれはただの暇つぶしなのだから無理に学校へ行く必要なんてなかった。


それでもあたしは学校へ向かう。


今回の人生は今までとは少し違っていて、大切にしたいと思っていたから。


「千奈、昨日は大丈夫だった?」


どうにか昇降口までやってきたとき、ちょうど綾が登校してきた。


「うん。平気」


あたしは無理やり笑顔を浮かべて答えた。


「全然平気そうじゃないじゃん」


「本当に大丈夫だから」


綾の優しさに甘えそうになるけれど、グッと我慢した。


ここで甘えてしまったら本末転倒だ。


今あたしはみんなを巻き込まないようにしなきゃいけない立場なんだから。


自分を叱咤して、綾に向き直る。


「あたしのことは気にしなくていいから」


「え?」


「じゃ、先に行くね」


あたしはキョトンとした表情の綾を残して、ひとりで教室へ向かったのだった。
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