死なないあたしの恋物語
どうせ1年間だけなんだから楽しんでしまおうと考えたのが悪かったのだ。


楽しむところか、本気で洋人君のことを好きになってしまった。


1年間だけでいいから、一緒にいたいと願っている自分がいる。


悩んだまま何度か記憶の改ざんを試みているうちに、窓から朝日が差し込んでいた。


昨日家に戻ってから着替えもせず、ご飯も食べていない。


不老不死だからなにも食べなくても平気だけれど、空腹は感じられるから不便だった。


仕方なくベッドルームからキッチンへと移動して、冷蔵庫から出来合いのおかずを取り出す。


炊飯器に残っている冷たくなったお米をお茶碗についで、レンジで温めて、それを食べた。


ひとりきりの食事はいつもこんな感じで終わる。


そんなときでも、あたしの頭の中には洋人君の存在が浮かんでは消えていっていた。


一緒に食べたハンバーガーはどんな食べ物よりもおいしいと感じられたっけ。


その時の味を思い出すと、途端に目の前にある食事が味気なく感じられてしまい、途中で箸を置いた。


急速になくなっていく食欲。


残ったおかずは冷蔵庫に戻し、自分の体を見下ろした。


制服はクシャクシャにシワができてしまっている。


「学校、行きたくないな……」


行けばまた洋館だの魔女だのと噂をされる。


あたしが噂の対象になることは問題じゃないが、それが原因でクラスメートたちの関係にヒビが入るのが嫌だった。
< 80 / 126 >

この作品をシェア

pagetop