死なないあたしの恋物語
☆☆☆

ここに他人を入れるのも初めての経験だった。


あたしは客間に洋人君を案内し、暖かな紅茶とタオルを差し出した。


「サンキュ」


洋人君は髪の毛を少し乱暴にタオルで拭いて、紅茶を飲む。


「なにこれ、うまいな」


「前にインドに行った時に買ったの」


「インド?」


「そう、30年くらい前」


あたしはそう言って紅茶を一口飲んだ。


芳醇な香りが口いっぱいに広がり、甘みがなくても十分においしいと感じられる。


これはご飯と一緒に飲んでも合う紅茶だった。


「30年……」


洋人君の表情が険しくなり、テーブルの上にカップを置いて居住まいを正した。


あたしはうなづく。


「話を聞かせてくれるか?」


「わかった」


洋人君を屋敷に入れるということは、そういう話をするということだとわかっていた。


あの時からあたしはすでに心を決めていたのだから。


「あたしはもう、500年くらい生きているの」


「500年」


洋人君は笑わなかった。


ただ、500年という途方もない年月を思って呆然としている。
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