【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「実は…電車の中に傘を忘れて来てしまったの…。
そうしたら親切な方が貸して下さって」
「まあ、そうだったの?! じゃあ少し雨に濡れちゃったんじゃないの…?」
「えぇ、それは大丈夫。 それより雨も止んでいるので、お庭の方にこの傘を干しても大丈夫かしら?」
「あら、お母さんがやっておきますよ。
貸して頂戴。 それより親切な方もいるものね。」
「いいの、私がやりたいから。 お日様にたっぷりと当てて、綺麗な状態で返したいわ。 明日は晴れよね?」
申し出を断り、両手で黒い傘を大切に抱くと、母は再び不思議そうな顔をした。
「そう、ならいいけれど。 傘を貸してくれた親切な方はお知り合いなの?」
「全然見知らぬ人だったけれど、今日付けでお父様の秘書になったって会社で偶然会ったの。
イギリスの食品会社のノエルにいらっしゃった方みたい」
「まあ、ノエルの? あそこのお菓子は美味しいわよねぇ。 それにしても竜馬さんったら、秘書を周りに置くのあんなに嫌がっていたのにね…。
それにしても優しい方に傘を貸して貰えてよかったわね、ルナ。」