【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「まあ、私も中華は大好きですわよ! お父様がよく銀座の有名店に連れて行ってくれるの。
電話をすれば、すぐに予約を取れると思うの」
私の言葉に、白鳥さんは思わず苦笑い。 手に取った携帯を指先で伏せると、少しだけ困った様に首を横に振る。
「僕の行きつけのお店で良かったら」
「ええ!勿論!白鳥さんの行きつけのお店だったら、お父様に連れて行ってもらったお店と同じくらい素敵でしょうね…!」
「余り期待はしないで下さいよ。プレッシャーで押しつぶされそうだ」
そう言って、彼は行きましょうと歩き出した。
相変わらず、歩幅を合わせて歩いてくれる。 私よりずっと長い足だ。 ペースを合わせてゆっくりと歩いてくれている。
ごつごつとした男らしい指先。 少し前を歩く彼の手に自分の手を伸ばす。 突然触れてしまったら、どんな顔をするかしら? いいえ、そんな勇気はないわ。
自分から男性の体に触れようなんて、想像するだけで顔から火が出そう。 きっと触れられたら、心臓が爆発してしまうに違いない。