【完】嘘から始まる初恋ウェディング

「何よぉー、ライン見てないのー? 今週は土日休みになったから、翔と遊ぼうかなあって思ったんだけど。
ん?誰?」

綺麗に巻かれた髪をなびかせて、彼女は私の顔を凝視した。 上から下まで、そして唇を尖らせてちょっぴり不機嫌そうな顔をして、再び白鳥さんへと視線を送る。

「何?誰?」

「いやあ、これは…その何というか…」

「新しいセフレ? 随分翔のタイプとはかけ離れてるじゃないの」

せふれ? …せふれとは一体なんでしょうか?聞いた事のない単語です。 やはり私は世間知らずだ。 後でネットで検索をかけてみようとは思います…が。

白鳥さんはぐっと強く彼女の腕を引いて、少し遠くに行ってしまう。

話声は聴こえなかったけれど、彼女に何かを言っている白鳥さんはいつもみたいにはにこにこ笑ってはいなく、どこか焦りにも似た表情を見せる。

思わず胸がもやっと霧がかかったように、じわじわと鈍い痛みが音を立てる。 空は晴れ渡っているはずなのに、気分はどこかさえない。

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