【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「えぇ、本当に。 じゃあ、私は傘を干してからお部屋に戻って着替えてくるわ」
「今日はお竜馬さんも早く帰って来るって言っていたから、皆でご飯にしましょう」
父がこんなに早く帰宅するのは珍しい事だった。
昔から子煩悩な人で、私達姉妹と共に過ごす時間を大切にしてくれる人だったけれど、仕事に対してもとても真面目な人で
繁忙期は帰宅が深夜になるのも珍しくはない。
お庭に白鳥さんから貸してもらった傘を干して、ゆっくりと自分の部屋に戻る。
会社での張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れて、扉を開けた瞬間ふわふわの温もりが私の体を包み込んだ。
「ジュリエット――ただいま。どうしたの?寂しかったの?」
はふはふと荒い息を立てながら、愛犬であるジュリエットは何度も私の顔をペロペロと舐めた。
真っ白でふわふわ。耳にはピンクのリボンが二つついている。 グレートピレニーズのメスで、体重は40キロと私と同じな大型犬だ。
尻尾を千切れんばかりに振り回し、私の周りを行ったり来たり、嬉しさを体いっぱいでアピールする。 性格はとても温厚で頭も良く、滅多な事がない限り吠えたりはしない。
私の癒しのひとつだ。