【完】嘘から始まる初恋ウェディング
私にも、両親にも、会社の人々には決して見せたことはない表情。
ひとしきり話し終えた後、白鳥さんはこちらへ戻ってきて、その後を小走りで彼女が追いかける。
戻って来た白鳥さんはいつも通りの笑顔に戻っていたけれど、心のモヤモヤは消えなかった。
「ルナさん、申し訳ありません。 」
「ぷ。何その喋り方、ウケんだけど。」
「お前、うるさいよ?! ゴホッ。すいません。友人とばったり会ってしまって」
白鳥さんの後ろにぴったりとくっついたその女性は、にこりと私へ笑みを落とし「逢沢実悠ですぅ」と挨拶をした。
逢沢 実悠さん。 名前まで美しいお方だわ。 それに随分大人の女性のよう。
思わず彼女を凝視してしまい、ハッと気が付き頭を深く下げる。
「は、初めまして! 桜栄 ルナと申します!」
「うわあ、マジでお嬢じゃんか。 小さくって可愛い~ッ。
翔から聞いたんだけど、チェリーチョコレートカンパニーの令嬢なんだって?
いっつもお世話になってます!チョコレート大好きなの!」