【完】嘘から始まる初恋ウェディング
不思議な事に彼女と話している時の白鳥さんの口調も、いつもと違うものに見えた。
親し気、と言うか…心を許している感じで。 そんな見た事のない白鳥さんの姿にモヤモヤした。
この気持ちが嫉妬というものだっていうのに……この時の私は気が付いていませんでした。
実悠さんが居なくなった後、すっかりと白鳥さんはいつもの彼に戻っていた。 優しく柔らかく、紳士的に笑う彼に。
でも実悠さんと一緒に居る時の彼の方が、どこか自然体だと思ってしまった。 そして、彼女を羨ましく感じてしまう自分がどこかに居た。
彼を平然と’翔’と呼び、さり気なく腕を絡める。 どこからどう見てもお似合いの二人にしか見えなかったから。
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白鳥さんの行きつけだというお店は実に不思議な造りをしていた。
大きなお店。 「中華」と赤い看板ででかでかと描かれたそのお店は、ぐるりとカウンターを囲むように厨房があって、数人の料理人たちの威勢の良い声が行きかっていた。
驚いたのは休日の真昼間だというのに、一人でお店に来店して昼間からビールを飲んでいる男性が数人いた事。
カウンターの周りには、テーブル席が幾つもあって、家族連れなどで賑わいを見せていた。