【完】嘘から始まる初恋ウェディング
ある意味頑固な私は、決めたことは譲らなかった。 観念した白鳥さんは料理を注文して、ビールをひとつ。巨峰サワーをひとつ注文する。
ビールは苦いから、まずは甘いお酒から始めようとの彼の提案だったけれど、子供扱いされているような気がして納得はいかない。
けれども届いた巨峰サワーは、甘ったるくてとても飲みやすかった。 お酒は乾杯程度、ワインを少ししか飲んだ事がなかった、けれど白鳥さんが選んでくれたお酒はとても美味しかった。
「美味しいです」
「あんまり飲み過ぎないようにして下さいよ…。 こんな真昼間からルナさんにお酒を飲ませたなんて狐ジジ…社長に知られたらどうなる事か…」
そう言った白鳥さんは、ビールを実に美味しそうに飲んでいる。
どうやらアルコールは好きなようだ。 そういえば、初めて家に来た時も父と一緒にお酒を飲んでいた。
ごくごくと喉を気持ちの良い音を立てて、ぷはあと息を吐くと顔をくしゃくしゃにして笑顔になった。 …なんて可愛らしいの。 白鳥さんがこんな気の抜けたような笑い方をするなんて…。
「内緒ですよ?」
ビールを飲み干した白鳥さんが、少しだけ悪戯な笑みを浮かべて鼻に人指し指を持っていく。
見たこともない表情に胸は高鳴っていく。 知らない顔を知れた時、こんなに嬉しい気持ちになるなんて…。