【完】嘘から始まる初恋ウェディング

それでなくても今日は泣きっぱなしだ。 ロミオとジュリエットの舞台を観劇して泣いて、実悠さんという美しい女性と白鳥さんが親しくしているのを見て、心の中で泣いていた。

感情がうまくコントロールできない。  困り果てた白鳥さんは目の前であたふたとしている。


さっきまできちんと見えていた世界が歪んでいくのを感じる。
頭がぐらぐらして、目の前に居る白鳥さんが何重にもなって見えた。



…私はこの日、桜栄家の娘らしくない失態を犯してしまうのです。

いつの間にか手放してしまった意識の中で、顔に広い背中と温かい温もりが感じる。
お日様のような良い匂いには、不思議と煙草の匂いが混じっていた。 それでも居心地が良い。

低く、甘い声が耳に響いていた。 「全く。」 「仕方がない女だ」 「つーか、軽ッ。」
幸せな微睡みの中、ゆっくりと目を瞑った。


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