【完】嘘から始まる初恋ウェディング
そのジュリエットの少し後ろ。ちょこんと床に腰をおろしこちらを真っ直ぐに見つめている。
ジュリエットのように嬉しさや楽しさを分かりやすくアピールはしないが、ゆっくりと立ち上がると尻尾をピーンと縦に伸ばし「にゃあ~ん」と甘い声を出しながら、足元に頭をすりすりと擦り付けて来る。
もうひとつの私の癒しだ。
「ロミオも、ただいま。今日もご機嫌ね」
頭と首筋を指で撫でてやると、その場にコロンと転がってお腹を見せる。安心して、甘えている証拠だ。
長い胴体と短い足。ブラウンの美しいヒョウ柄。 マンチカンとベンガルを掛け合わせて産まれたジェネッタという希少価値の猫だ。
遊び好きで友好的だけど、ちょっぴり警戒心が強い。 ロミオは滅多に人に懐く事もなく、家族の中でも私に一番懐いていた。
二匹と一緒に過ごす時間は私にとっては至福の時で、どんなに疲れ切っていても二匹を見ていると不思議と疲れは吹っ飛んでいく。
クローゼットを開けて部屋着に着替えている間も、ジュリエットは嬉しそうに私の周りをくるくると回る。
少し離れた場所からロミオがジッとこちらを見上げていた。