【完】嘘から始まる初恋ウェディング

ちらりと目に入ったのは、繁華街の少し外れにある派手な装飾のラブホテルだった。

思わず唾をごくりと呑み込む。 確かに、あそこならば休めるし、ベッドもある。 でも大丈夫か…この状況で我慢できるのか、俺?

背中越しに感じる温もり、容姿だけはやたら美しい女。もしも何か間違いを犯してしまったら。



ぶんぶんと頭を横に振って、ズボンのポケットに入っていたキーケースを取り出す。

じゃらじゃらと金属の鍵がぶら下がったキーケース。 この中には見覚えのない鍵が数本。 酔った勢いでやった女が彼女面して、いつでも来てね、と渡してきたもの。

その中に自分のマンションの鍵も勿論ある。 …しかし、俺の家とはいえラブホテルと状況は変わらない。 そもそも俺はルナの父のクソジジイの設定のせいで、海外から帰ってきたばかりの家なき子になっている。

少し思い悩んで、携帯をスライドさせた。

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