【完】嘘から始まる初恋ウェディング

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「今日は…本当にありがとうございます。 そして…ごめんなさい。
お酒を飲んで人様に迷惑をかけてしまうなんて…。
でもすごく楽しかった…。白鳥さんと大好きなロミオとジュリエットも観れて
あんな美味しい中華料理屋さんにも連れて行ってくれて、まさか白鳥さんの妹さんにまで会えるなんて…!」

帰り道。

外はすっかりと暗くなっていた。 スーパーの事があったから、周囲には細心の注意を払いながら。

人の気配はない。先程の事もただの思い過ごしであれば良いのだが。けれど自分の中の第六感を俺は結構信じている。

間違いなく、ルナは誰かに狙われている。 本人が何も気づいていなく、怯えていないのが唯一の救いだ。

「いえ、全然お気になさらずに」

秋の空を映す月はいつもより明るく見えて、綺麗だ。 ルナはいつも以上にご機嫌で、俺の少し前をちょっぴり浮足立って歩いている。

くるっと振り返ったら、さっきと同じ笑顔を見せた。

思えば、こんな純粋な笑顔を誰かから向けられることが大人になってからあっただろうか。

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