【完】嘘から始まる初恋ウェディング
ここ一週間作り笑いを浮かべっぱなしで表情筋がおかしくなっている。
ルナがこちらへ振り返る度に、フレアスカートが風でふんわりと揺れる。 ふふっと小さな笑みを浮かべて、思い出すようにルナが口を開く。
「白鳥さんって煙草を吸うんですね」
「は……?」
ルナの前では煙草は一切吸わなかった。
つとめて品行方正な人間を演じていた。 彼女を守るという依頼の名目上、彼女が嫌がりそうな事は避けていた。
好かれたかったわけではない。むしろ嫌われた方が楽ではあったが、契約上側に居なくてはいけないのならば、付かず離れずの距離を保ちたかった。
煙草を吸うなんて体に悪いですわ、といつもの口調で小言でも言われたら、ストレスで頭が禿げてしまうかもしれない。
けれど彼女は予想に反した事を言うのだ。
「別に隠さなくったっていいのに」
「いえ…ルナさんは煙草が嫌いだろうから…」
「好きではありませんけれど…白鳥さんから香る煙草の匂いは嫌いじゃありませんわ…。
それに私に気を遣って目の前で煙草を吸わないでいてくれたのならば、その優しさも嬉しいものです。
…けれど、私はもっと本当の白鳥さんを知りたいわ。
撫子さんに見せたり、今日会った実悠さんに見せるような白鳥さんだって知りたいもの…」