【完】嘘から始まる初恋ウェディング
リビングの中に入った瞬間、私の少し前を歩いていたロミオが「シャー」と威嚇に似た声を出し、小さな体を大きく膨らませた。
ジュリエットにいたっては父の姿を見つけた途端、嬉しそうに飛びついた。 そして私はその場で数秒間フリーズしてしまった。 その間もずっと、ロミオは私の後ろに隠れ「フーシャー」と繰り返すばかりだった。
「あはは、おかえりジュリエット。分かった、分かったから。
お客さんも驚いてるだろう。 」
「大きな犬ですねぇ。真っ白で綺麗だ。」
「うちの娘、ルナが飼っているんだ。 とても人懐っこいんだよ。
分かった分かった、真子、ジュリエットに餌を」
一瞬目を疑ったがリビングのダイニングテーブル、父の隣に座っていたのは間違いなく白鳥さんだった。
テーブルの上には、ビールが並んでいて、彼は穏やかな笑みを浮かべてジュリエットの頭を優しく撫でる。
私はまだこの状況に頭が追い付いていなかった。 けれども顔を上げてこちらを見つめる白鳥さんは、上品な笑みを浮かべて「こんばんは、お邪魔しています」とゆったりとした口調で口を開く。