【完】嘘から始まる初恋ウェディング

その場で姿勢よく頭を下げると、彼女は小さく笑った。

こんなにドキドキしたのは初めてだった。 私の中で、自分が作りたいお菓子や、皆に手に取って欲しい企画は沢山あった。

けれどこんな自分が作る商品なんて…といつも心に思うだけだった。 でも一歩勇気を踏み出すだけで、世界はこんなにも違って見えるのだ。

「ルナさん」

すぐに声を掛けてきてくれたのは、白鳥さんだった。
彼の大きな手が、私の頭を子供のように撫でる。

体の震えは止まったと思ったけれど、思わず安心して膝ががくがくとする、と白鳥さんは直ぐに腕を取ってくれた。

「ご立派でしたよ。 僕も、ルナさんのお菓子に対する愛情は本物だと思ってるから、絶対にいけると思っていたんです。」

しなだれかかる白鳥さんのスーツからは、僅かに煙草の香りがする。 とても安心する。

私が勇気を一歩前に出せたのは、あなたの存在があったからだもの。 毎日夜遅くまで、企画書を手伝ってくれた。

今回勇気を出せたのは、絶対にあなたがいたからなの。
白鳥さんの言葉に、体がじんわりと優しく熱くなっていく。

「ルナさんは本当に泣き虫だなあ…」

「泣いてなど、いません…!」

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