【完】嘘から始まる初恋ウェディング

そんな独り言が零れ落ちたのに、驚いた。
誰が居るわけでもないのに室内を見回して、はぁーっと長いため息が漏れる。

何を考えている。そもそも住む世界が違い過ぎる。 ルナだって、本当の王子様…阿久津フーズファクトリーの御曹司と一緒になった方が絶対に良い。

煙草の煙をくゆらせていると、ドア越しカリカリと扉を引っ掻く小さな音が聴こえた。
珈琲の缶の中に煙草の灰を落とし、扉を開くとロミオがお座りをしてこちらを見上げる。

「何だよ」

「みゃあ…!」

目つきが悪く手足の短い猫が、ガラス玉のような瞳をこちらへ向ける。

ふぅっと小さくため息を吐きながら、その場にしゃがみこみ指を差し出すと、ロミオは目を瞑りすりすりと自分の体を俺の指へと擦り付ける。

まさか、俺…猫に慰められている? 真ん丸の瞳に全てを見透かされているような気がして、変な気分だ。

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