【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「さっさと服を着ろって!」
立ち上がり、ベッドに散らばったルナの服を無理やり彼女に被らせる。
すっかりと涙は引っ込んで笑っているが、その頬には涙のあと。 強く握りしめたせいで、両手首が赤くなっていて、胸が痛んだ。
自分がした事なのに自己嫌悪に陥るなんて、情けない話だ。 それでもにこにこと笑っているルナの手を掴む。
「ごめん、赤くなってるな。 冷やした方がいい」
「この位平気ですわ…。
やっぱり白鳥さんは優しい人、私が思った通りの人ですわ」
「だーかーら、お前はさぁーッ…」
「口が悪くても、お前って呼ばれても白鳥さんが好きです…」
もう何を言っても無駄なような気がしてきた。 らしくない自分がそこには居る。
女は少し位軽い方が良い。後腐れない方が便利で、楽しい。
重っくるしいのは苦手で、本気の恋愛は長らく避けて通っていた。 …守りたい女なんてこの世にいなかった。
これは仕事で、彼女の身辺警護で側に居ただけ。 そこには特別な感情なんてない。 あってはいけなかった。
でも、今目の前にいる頼りなく笑う女を守りたいと思っている。 それが仕事か個人的な理由かは、今は考えたくない。