【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「白鳥さん、お出かけなさるのですね…」
「まーなー、お前土日は家で企画書をまとめるんだろう?
おいおい、ジュリエット。そんなに舐めるな。くすぐったいだろうが」
父や母の前では礼儀正しい姿勢を崩さなかった白鳥さんが、私の前でだけは’お前’と呼び口調も荒々しくなった。
そんな小さな変化でも、私にとってみたら実は嬉しい。 だってその白鳥さんの方が自然体で、撫子さんや実悠さんに見せていた姿だから。
でも…彼が側にいないのは寂しい…。そんな気持ちが顔に出てしまっていたのか、ジュリエットを抱えたまま白鳥さんがこちらの顔色を伺う様に覗き込む。
「どうした?」
「いえ…別に何でもないです…」
「何だよ、ハッキリしないな。言いたい事があるなら言えよ」
「本当に何でもないのです。私の事はお気になさらずに…。
少し…少しだけ、白鳥さんがいなくって寂しいんです…」
素直にそう言葉にしたら、彼は何とも言えない顔をした。 寂しそうな顔をしたら、困らせるだけ。