【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「あーーーーーー!」
思いとは裏腹に、女の体をぐいっと押しのけて立ち上がった。
「翔…?」
「悪い!用事が出来た!」
「はぁ?!人呼んどいてなんだよ、それ!」
「すまんな。ラブホ代は置いておく。 じゃ!」
「ちょっとぉーーーーー!!最低!!!」
―――――
午後20時。
実悠からの電話は、ルナが実悠の勤める美容サロンにやって来た事だった。
…今日は一日家にいるって言ってたじゃねぇか!!!!!
そして、何でも夜からは婚約者である阿久津とレストランにご飯に行くと言い残したらしい。
くっそ、俺の貴重な休日が…! 社長から預かっていた携帯にはルナのGPSがついていた。何かあった時の為だ。
どうしてあの女は面倒な事ばかりしてくれる。
数日前、社長からルナを頼まれていた。 何でも婚約者として阿久津北斗を紹介した次の日、謎の怪文書が再び届いたらしい。
内容は『婚約を止めにしないとルナに何が起こるか分からない』といったものらしい。 なんつータイミングだ。婚約の事は近しい人物しか知らなかったはずだ。
そしてその翌日にルナが「好きな人がいるから婚約はなしにしてほしい」と伝えたもんだから、社長いわく犯人はルナの好きな男だ、らしい。