【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「あの馬鹿、一体どこをふらふらしていやがる!
つーか阿久津北斗と一緒じゃねぇのかよ?! あの坊ちゃんは何をルナを送り届けずに…」
歌舞伎町は面積でだけいえば、それ程広くはない。
けれど携帯を片手に人波を掻き分けて走り回る俺は、秋だというのに背中にびっしょり汗をかいていた。
数十分探し続けた事だろう。 黒髪ロングの似た女を見つける度に顔を確認しにいくが、ルナは中々見つからない。
…どこに行きやがった!馬鹿女!怒りがピークに達した時だった。
「離して下さいッ!私は人を探しているんです!」
やけに高音の丁寧な口調の女の声が響いたのは。 こいつの頭の上から出ているような高い声は、どこにいてもすぐに見つける事が出来る。
繁華街のビルの立ち並ぶお店の前で、ルナが三人組の男に絡まれていた。 これだから歌舞伎町に来るとロクな事が起こりやしない。
男達に囲まれて、小さなルナは上を向いてキッと男達を睨みつける。 だから何で一人でいるんだよ。阿久津北斗はどこに行きやがった。