【完】嘘から始まる初恋ウェディング

特にこちらからは何をしたというわけでもないのに勝手にすっ転んだ男達は、「覚えていろよ」と捨て台詞を残して、夜の街の光の中へと消えて行った。

はぁ、とため息をつくのもつかの間、ルナはぎゅっと俺の背中に抱き着いてきた。

「怖かった…!」

「怖かった、じゃねぇよ、馬鹿野郎! 何を歌舞伎町なんてふらふらと一人でほっつき歩いていやがる!」

振り返り怒鳴りつけると、ルナは大きな瞳からぼろぼろと涙を零して、唇を噛みしめる。
ひっく、ひっくと嗚咽を上げる度に肩がびくびくと動く。 いつかのように体中震えていた。
…全く、どれだけ人に心配をかけてれば気が済むのか。

「……怒鳴って悪ぃ。大丈夫か?怪我はないか?」

俺の言葉にこくこくと言葉なく頷く。 ハンカチなんつー紳士的な物は現在常備していない。

着ていたパーカーの袖でぐいっとルナの涙を拭う。 拭ったはずが…顔を真っ赤にして更に泣かせる結果になってしまう。

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