【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「白鳥さん…」
「何だよ」
「今日は守ってくれて、ありがとうございます。 すごく嬉しかった。まるでヒーローみたいで」
ヒーローという言葉に背筋がぞっと凍り付く。 こんな邪なヒーローが居てたまるか。
それでもなおも、ぴたりと体を密着させてルナは続けた。
「やっぱり白鳥さんは私の思った通りの人…。 私、あなたと居るととても胸がドキドキして、嬉しくなって…
ありがとうございます。私と出会ってくれて…。いつも守ってくれて…
私白鳥さんと出会えてこんなにも幸せだわ」
どこまでも真っ直ぐで嘘のない言葉を前に、自分という存在が恥ずかしくなった。
煙草を灰皿に押し付けると、スッとその場を立った。
やっぱり俺に、この女は汚せない。 背中を向けたまま、ルナに言う。
「お前ベッドで寝てろ。 俺はソファーで寝るから」
この世界中で俺にここまで我慢をさせる女は、お前位だ。 お前と一緒に居ると、感情がぐちゃぐちゃになる。
けれども、立ち上がった俺の後ろルナはぴたりとくっついてくる。 やっぱりその指先は震えている。 本当は怖くて仕方がない癖に。