【完】嘘から始まる初恋ウェディング
周りは女性客かカップルばかりだ。途端にそこに立っているのさえ恥ずかしくなる。 それでも店員は俺の理解不能な説明ばかりしてくる。
この場にいるのもいたたまれない。
ルナへプレゼントをする理由なんてない。寧ろ女に何かを買うなんて、俺の辞書にはない。
それでもこれを渡した時の嬉しそうに笑うルナの顔ばかり思い浮かぶ。 …あいつの企画が通ったお祝いって事で…。そこには深い意味はない。 絶対に絶対に深い意味はない。
「すいません、これ包んでください…」
自分らしくない買い物はした後にすぐに後悔した。
スニーカーを新しく買うつもりだったのに。
どうしてあいつのいない休日に…あいつの事ばかり考えてしまうのだろうか。
女性客ばかりのいるアクセサリーショップに居るだけで疲れてしまった。 綺麗にラッピングされた紙袋を抱えて久しぶりに自分のマンションに帰ろうとした時だった。
ポケットに入れていた携帯が鳴り響いて、着信相手は実悠だった。
ナイスタイミング。 きっとルナの事ばかり考えてしまうのは色々と溜まっているせいだ。 きっと違う女で鬱憤を晴らせば、こんな自分らしくない気持ちも落ち着く。