【完】嘘から始まる初恋ウェディング
実悠の笑顔は引きつっていた。 せっかく自由になれて、好きな女を好きに抱けるチャンスなのに
俺が抱きたいのは目の前にいる良い女ではなくって、花のように笑いながら大粒の涙を流すあの女だった。
自覚してしまって、自分にげんなりとする。 好きな女じゃなきゃ抱けないとか、どこの純情恋物語だ。 据え膳食わぬは男の恥。だから目の前に現れた美味しそうな女の子達は食べつくしてきたはずなのに
どこまでも甘ったるい、あの女を食べたい。砂糖菓子みたいな胸焼けをしそうな女じゃなきゃ満足出来ない、なんて。
「ねぇ、マジ…?笑えないんだけど。」
「俺も…笑えない…。
ごめん、実悠。俺帰るわ。ホテル代置いておくから…」
「ちょっと待ってよ。 あの子の父親に頼まれて身辺警護してるだけでしょう? 大体翔ああいうタイプ苦手じゃん。
本気で好きになるとか翔には似合わないってば……
ねぇ、翔ってば」
「マジでごめん、実悠。 俺あいつ以外駄目っぽいわ……」
「ちょっと、翔!」