【完】嘘から始まる初恋ウェディング
ぎくり。 それは当たっている。 けれど貴様らの父親が俺に面倒な案件を押し付けて来たのだぞ?何故に俺にキレる?
「とにかく…僕はレナさんはレナさんの気持ちに正直になった方がいいと思います」
「何の事よッ!
話にならないわ!北斗行きましょう!
あなたの事はもう一度お父さんとじっくり話をさせてもらうわ!」
そう言ってレナは阿久津北斗の手を引いて、その場をそそくさと去って行ってしまう。 ああ、何だか全ての事が繋がって行く気がする。
素直すぎる鈍感な妹と、天邪鬼な敏感な姉。
今回の仕事の依頼が来たのは三週間前。 丁度社長がルナの婚約者にと阿久津北斗を指名した事から始まる。
もしかすると…今回ずっとルナの様子を伺う様に過ごしてきたのは……。
「白鳥さん、どうして帰ってきたのですか?」
首を傾げながらこちらを見上げる天然ボケのお嬢様はきっと何も知らない。
どこか頼りないこの女と一緒に育ってきて、あの小生意気な女にもそれなりの苦悩はあったのかもしれない。
人の気持ちに敏感に気が付ける俺は、少しだけ哀れなレナの気持ちが分からなくもない。 見たくない事まで見え過ぎてしまうのは、時に自分自身を傷つける。