【完】嘘から始まる初恋ウェディング
白鳥さんはソファーに突っ伏したまま一人でブツブツと何かを言っていた。 まさか今日帰って来るとは思わなかった。
先週の休日も私のせいで彼はゆっくり出来なかったから、今週は迷惑をかけないように一人で家でお仕事をするつもりだった。
ゆっくりしてもらいたかったのに、いざ帰って来てくれたらこんなにも嬉しい気持ちになる。
独り立ちを決めたのに、すぐに甘えた気持ちになってしまう自分に活をいれたい。 それでなくとも最近は白鳥さんに頼りっきりな気がする。
「あのー…白鳥さん?」
ジュリエットの頭をぐしゃぐしゃと撫でながら、こちらを見上げる表情は少しだけ不機嫌そう。
出会った頃は繊細な顔立ちをしていて、男らしいと思ってばかりいたけれど、最近はこんな子供のような顔を見せてくれるようになった。
口を一文字に結んだまま、ジュリエットの求愛を受ける。
そんな姿にまで愛しさを感じてしまうのだから、好きになってしまえばどんな姿でも愛しくなってしまうものなのだと思う。