【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「実悠さん…?!」
「ルナちゃん…」
今日も細身のスキニーをびしっと決めていた。 けれどいつものように髪はまとめていない。 緩く巻いている栗色の髪は今日はストレートで風でふわりと揺れる。
化粧はいつも通り綺麗にしていたけれど、顔色は余り良くなかった。
「ちょうど良かった。ルナちゃんに話があって会社までやって来たの。この間とは逆ね」
「私に…?話が……?
こんな所ではなんですから、どこかカフェにでも」
そう言った私の腕を引っ張り、引き止める。
やっぱり実悠さん、顔色が悪い。 というか、血色が悪い。 いつもはチークもリップもラメの入った物を施して、キラキラしていたのに。
乾燥したせいかひび割れた唇を噛みしめながら、顔を上げる。
「実悠さん、ちょっと顔色が…」
互いの長い髪が、秋の気まぐれな大風でふわりと揺れた。
実悠さんからは少しだけ、白鳥さんに似ている煙草の匂いがした。