【完】嘘から始まる初恋ウェディング
誰よりも泣かせたくないと誓ったはずだった。 うれし涙以外の涙は似合わない女が眉を下げて瞳いっぱいに涙を溜めて顔を真っ赤にさせる。
まるで汚い物でも見るような目で俺を見ていた。
「ルナ…!ちが……」
「嘘でしょう、白鳥さん…。今の話。
お父様に頼まれていた?身辺警護?
私に近づいたのは、全部お金の為だったって事ですか……
一緒にいてくれたのも、全部嘘なの?」
「違う…!待て。ちょっと話を聞け!」
レナの手を離し、ルナを追いかけようとしたけれど
大きな瞳からはぼろぼろと涙が零れ落ちて、無言で俺を拒否する。
やっぱり姉妹だ。 俺を見上げる瞳は、レナ顔負けに気が強く軽蔑の眼差しをこちらへ容赦なくぶつけた。
「信じていたのに…!」
追いかけるのを、躊躇ってしまった。
だって全てが誤解なわけではない。
ルナを好きになったのは嘘じゃないが、俺は金の為に桜栄社長に頼まれて君を守っていた。
一緒にいたのも、全部仕事の都合上だ。 初めて守りたいと思った女だった。 それをどう伝えていいか、この時の俺には分からなかった。