【完】嘘から始まる初恋ウェディング

寧ろ俺はもう自由だ。 そう考えれば気が少しだけ楽になった。

恋人として一緒に暮らそうといった話は全て流れただろう。 結局のところ誰か一人を守り続けて生きて行くなんて、俺には元々似合わない。

いいじゃねぇか。元の暮らしに戻るだけ。 適当に仕事をして、好きに遊んで、好きな時に好きな女を抱いて生産性のない生活に舞い戻る。

それが幸せだったはずだ。 あの面倒くさくって重苦しいお嬢様とは縁がきっぱりと切れるんだ。 すっきりと晴れ晴れしい気持ちになる…はずだったのに。

「とはいえ、阿久津フーズファクトリーとの関係は良好に進めたい。 ルナには約束通り婚約の話を進めて貰う事にした。
レナには悪いが納得はしてくれた。
来週末には両家顔合わせを進めようと思う」

「は…?!」

「ん?」

両家顔合わせ?! それはルナも納得しての事か?心臓がバクバクと鼓動を刻む。
俺には関係ない。もう契約は終わった。ルナが誰と結婚しようと、もう口を挟む権利はない。

お嬢様育ちのあいつには、阿久津北斗の方が似合っているに決まっている。 俺と過ごしたこの一ヶ月間の事なんて、幸せの中忘れて行く事だろう。

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