【完】嘘から始まる初恋ウェディング
休日の事務所には、親父と撫子が居た。 せっかくの自由な休日だというのに、何もやる気は起こらない。
親父に渡された風俗の名刺はぐしゃぐしゃにしてゴミ箱に捨てた。
ふんっと吐き捨てるように言うと、すぐにパソコンの競馬番組に釘付けになっていた。 ソファーにだらしなく寝転んで、俺は生きる抜け殻と化していた。
ちょこんとソファー前に腰をおろした撫子の短いスカートから、馬鹿みたいに派手な真っ赤なパンツが見えている。
もう何も突っ込む気にはなれない。 撫子はふぅーとわざとらしいため息をついて、こちらに目を向ける。
「全く、良い歳した男が情けないったら…」
「うるせ」
「あんたが中学生の頃だっけ?私小さかったからあんまり覚えていないけど、お母さんが連れて来た美人女子大生のカテキョにガチ恋したんだっけ?」
人の黒歴史をさらりとバラす妹を前にしても、突っ込む気も起きなかった。
懐かしい。 美人で清純そうな女子大生だった。 しかしこれがとんだビッチで、俺の童貞と淡い恋心を奪ったまま居なくなったんだっけか。
あれから女に余計な幻想を持たずに済んで、今じゃ感謝している。