【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「もうッ。うじうじ男らしくないの!
そんな最低な男でもルナちゃんはあんたが好きだって言ってんだから、あんたもこういう時に男を見せなさいよッ。
だって好きなんでしょう?!あんたの言うたかが恋愛如きでそんな腑抜けになってんの、誰よ?!
そんなになるくらい好きなら行けよッ!」
むくりと起き上がったら、撫子の拳がお腹に力強く入った。
お前に言われなくたって分かっている。 こんなに腑抜けになってしまう位いつの間にかルナの事を好きになっていた。
せっかくの休日なのに、何もする気にはならなかった。
あの砂糖菓子のようなふわふわとしたお嬢様の顔ばかり、かき消そうとも浮かんでくる。
秋が美しいと初めて思ったのは、ルナに出会えたからだ。
ロミオにはなれない。王子様には似つかわしくない。 そんな俺でも好きだと真っ直ぐに伝えてくれたから。
本当は男らしくもないし、失恋ごときでこんなにも落ち込んでしまう位情けない男だ。
それでもこの先、お前以上に守りたいと思える女には出会えそうにない。
「ほら、行けよ。 何休日に事務所に来てダラダラしてやがる」
「まさかお前のような小娘にそんな事を言われる日が来るとはな」
「ルナちゃんの情報教えてやったんだから、情報料」
ちゃっかりとした妹は、両手をこちらへ差し出す。
チッと舌打ちをしながら財布を取り出し、一万円札を手の中に滑らすと「まいど!」と言って撫子はまた笑った。