【完】嘘から始まる初恋ウェディング

隣に座っていた父が眼を丸くして、硬直している。 途端にサーっと顔が青ざめていって、「な、何を言っているんだ」と私を椅子へ座らせようと腕を掴む。

勿論ほっくんも、ほっくんのご両親も茫然としている。

「阿久津さん、こ、これはマリッジブルーといいますか、何といいますか…
ルナ、取り合えず座りなさい。失礼だろう?」

「私には好きな人が居ます…!その方以外とは結婚したくありません!
なのでこの話は無かった事にして下さいッ」

「ルナーッ!」

青ざめていく父は大きな声を出して、今にも倒れそうだった。 それを支えるように母が立ち上がる。

その時個室のドアが乱暴に開かれる。
ああ、これはいつか見た光景だ。

あなたと出会った時、パッと世界は明るくなって、あなたが立っている場所だけ明るい陽射しが差し込んだように

視線は釘付けになって、見る物全ての色を変えて行った――。

「ハァ、ハァ…」

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