【完】嘘から始まる初恋ウェディング
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事務所に着くと、親父はパソコンに向き合い何やら真剣な顔をしている。
履いていたサンダルが貧乏ゆすりをする度に揺れていた。 休日の事務所には親父と俺の年の離れた妹である白鳥 撫子がだらしなくソファーに寝そべり携帯でカチカチと文字を打っている。
「あああーッ!来たッ!行けッ行けッあああああ!!!追い上げてくれぇ!三位以内なら複勝だから!」 親父も撫子も俺が来た事に等見向きもせずに、パソコンと携帯の画面に夢中になっている。
親父にいたっては、趣味の競馬のレースを見ているようで、「くそぉ!」と大きな声で叫びその場で項垂れる。 そして乱暴にパソコンの画面を閉じる。
「ああ、あんた居たの?
つーか、父さん負けたの?」
俺に気づいた撫子が視線をこちらへ向ける。
「たくッ、やってらんねぇなあ!」
「マジで、最悪。 私のお小遣いは?」
「んなもんねぇよッ!おめぇは家に帰って勉強でもしてろ!全く人の金を何だと思ってやがる!」
「はぁー?負けたからって八つ当たりとかやめろよな。 マジで最悪なんだけど。
これから彼氏と遊びに行くのに」