【完】嘘から始まる初恋ウェディング
とはいえ、仕事は全く出来ない。
恥ずかしい話ではあるが、チェリーチョコレートカンパニーは私の父である桜栄 竜馬が4代目の歴史ある由緒正しき製菓会社で
本来であるのならば、私のような無能な人間が新卒の分際で花形である企画部に配属など…そもそも入社さえも出来るはずがないのだ。
父の親心。 それに甘えてしまっている情けない娘である事は重々承知している。
姉は私とは違い昔からしっかりしていて、仕事もよく出来る面倒見の良い女性だ。
社長の娘だという事で始めは苦労したと思うけれど、仕事をバリバリとこなす彼女は上司からも厚い信頼を得ており、部下からも慕われている。
まるで私とは大違いの姉の背中を追うばかりで、全く成長出来ていない自分を恥ずかしく思う毎日だけど、少しでも会社の役に立てるよう自分なりに頑張っている最中だったのだが…
私のドジは筋金入りで、入社当時はコピーさえまともに取れない女だった。
大切な書類を失くしてしまったり、簡単なデーター入力でもニアミスが目立ち、電話対応は緊張してしまい相手が喋っている内容が理解出来ずパニックになる始末。
けれど、上司や同僚は私がどんなミスをしてしまっても強くは叱れない。
分かっている。 それは私が父の娘で、どれだけ出来損ないでもこの会社の社長令嬢であるからという事は…。