【完】嘘から始まる初恋ウェディング
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ゲストルームだと通された部屋には驚愕した。
広い室内には、キングサイズの立派なベッド。 生活に困らない家具は一式揃えてあって、何と壁に埋め込まれた大型のテレビまであった。
全体的に暖色系の色目の部屋で、掃除もきちんと行き届いている。塵一つ見つけられぬほどだった。 自分の住むマンションとはえらい違いだ。
ベッドのマットレスは適度な硬さで、寝心地も良い。 なんつー快適な環境だ。 ルナの母親のご飯も豪勢で、とても美味しかった。 うちの実家とは偉い違いで、破格の値段で雇われた上に居心地の良い住居と三食付き。…悪くはない。
しかし30分後向かったルナの部屋には更に驚く事になる。
入った瞬間目がちかちかして、目眩がしそうだった。
「白鳥さん、どうぞ。 狭い部屋で恥ずかしいんですけど」
はふはふと息荒くジュリエットが俺に駆け寄って来る。 真っ黒で真ん丸の瞳をキラキラと輝かせながら、前足を俺の体へと押し付ける。
臭ぇぇええええ。
獣の匂いが付く!触るな、舐めるな、寄って来るな。 とは口が裂けても言えずに、にこにこと笑いながら頭を撫でる。
生意気な猫は、ルナの天蓋付きの大きなベッドの、花柄のシーツの真ん中で寝転んで鋭いビー玉の瞳でこちらを睨みつけていた。