【完】嘘から始まる初恋ウェディング
箸を動かす手がぴたりと止まる。
白鳥さんは小さくはにかんで、「好きです」と柔らかい笑みを浮かべる。
その笑顔を見るだけで心臓がドキドキして、止まらなかった。
私は、幼い頃から甘いお菓子が大好きだ。 勿論洋菓子メーカーの娘であるといった理由もあるのかもしれないが、自社の商品以外でも美味しいと評判のスイーツは取り寄せる。
その趣味がたたって、自分で手作りをするまでになってしまった。
「そうなんですね。 今度是非白鳥さんの為にお菓子を作りますわ」
「それは嬉しいです。 楽しみだなあ~、ルナさんのお菓子。」
彼の何気ない一言がこんなに嬉しいなんて。
朝食を済ませて、白鳥さんと一緒に出社する。
この間の事があって、電車はうんざりだと思ったばかりだが、ただの通勤時間が特別なものになっていく。
彼は、私の理想通りの人だ。容姿はさることながら、共に過ごす時間が増えれば増えるほど、彼の良い所ばかり見えてくる。
通勤ラッシュで満員電車の中では、人々に潰されそうになる私をさり気なく守ってくれた。
電車内で老人の方を見つけて、空いた席にスムーズに通した。 …とてもお優しい方だわ…。 この世界にここまで完璧な方がいらっしゃるなんて…。