【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「白鳥さん、おはようございます。 随分お早い出社ですね。」
声のトーンは普通だけど、私の前に立ちはだかり気の強い眼差しを向けて白鳥さんを見上げた。
レナちゃんは、まだ白鳥さんの事情を知らない。 まさか自分の実家で彼が暮らしているなんて夢にも思わないだろう。
昔からレナちゃんは私に近づく男性から守ってくれた人。 もしかしたらこの状況。変な誤解をしてしまっているかもしれない。
説明をする前に、白鳥さんは私の前にやって来て、指の傷に気が付いてくれた。
すかさず手を取って、指に刺さった棘を抜いてくれた。 そして水道の水を出して、私の傷口を濡らす。
痛みよりも、彼に触れられた指先から熱が産まれて顔が熱くなっていく。
「消毒をしておいた方がいいですよ。ルナさんの綺麗な指が腫れたりしたら大変だ。」
「白鳥さん、ありがとうございます…」
「では、僕は少しだけ社長室に行ってきます。
十時のミーティングまでには戻りますので」