【完】嘘から始まる初恋ウェディング
何故か洗面所にはロミオが身を屈めて座っていた。 それにしても目つきの悪い猫だ。
小さな体を大きく膨らませて、こちらに向かって威嚇する。 シッシッと手で追い払おうとすると、こちらに向かって短い前足を素早く差し出す。
…小さい癖に鋭利な刃物のような爪をしてやがる。 ジュリエットのように目が合えば飛びついてくる犬も嫌いだが、可愛げのひとつもない猫はもっと大嫌いだ。
ロミオのビー玉のような瞳は、どれだけ取り繕おうと俺の本性を見抜いている気がして、気が気ではない。
「出て行けよ!」
「シャー!」
その時、廊下から「ロミオー、ロミオー、」とクソ猫を探す砂糖菓子のような甘ったるい声が響いた。 ロミオの耳が声のする方にピクピクと動き、少しだけ開いた洗面所の隙間から顔を出す。
「ロミオったら、こんな所にいたの…?き、きゃあー!」