【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「ロミオは、私がお風呂に入っている間も脱衣所で待っているんです。
きっと白鳥さんの事も待っていたのね。」
「そ、そうですかねぇ。」
見守っていたというよりかは、監視だろう?! 少しも可愛げのない猫は、ルナの腕の中で甘えるように顔をすり寄せた。
桜栄家で過ごして数日、分かった事が少しだけある。
桜栄ルナは、とんでもなく天然で根っからのお嬢様である事。 俺のイメージしていた超絶我儘のお嬢様ではない。
それどころか、天使のように優しくて、とても真面目で一生懸命の頑張り屋さんであるという事だ。 俺がこの家の息子だったら、こんな謙虚な人間には育たないだろう。
とはいえ、苦手な事には変わりない。 純粋で無知という事は、時に残酷に人を傷つける事がある。
ルナに引き換え、チェリーチョコレートカンパニーに勤める姉のレナは勝ち気で気が強い。
ショートカットでルナよりずっと背が高いが、ルナに負けず劣らずに綺麗な顔立ちをしていた。
けれどもルナと同じくらいこの姉も苦手だった。 女は少しアホで可愛げがあった方がずっと良い。 そして何故かレナからは、敵視されている。
俺の経歴、突然父親の秘書になった事。そして桜栄家でお世話になっている事。その全てが気に食わない様だ。