【完】嘘から始まる初恋ウェディング

桜栄母の飯はとてもうまい。これはお世辞抜きに、日々コンビニ弁当の俺の心には染みる。

そしてチョコレートカンパニーの社長である親馬鹿な男は、仕事だけは異様に出来る。 部下の前では威厳を保っていて、昼夜問わず仕事の事ばかり考えている。 自分の親父同様ただの馬鹿だと思っていたが、仕事の面では違うらしい。


そして、もうひとつ。

ルナの身辺警護をする為に、彼女と日々を共にする。
その中で気が付いた事がある。

最初は社長の言っていた「あなたの娘である、桜栄ルナさんのハートを盗みにいきます」というコナンやルパンの世界の怪文書を本気にはしていなかった。

けれども、確かに視線を感じる日は多かった。 ルナ自身は全く気が付いちゃいなかったが、確かにこの子は誰かにつきまとわれ、狙われている。


要領も悪く、頼まれた仕事を終わらせるのも遅い。 見ていて苛々する程、真摯に仕事に向き合っていた。

だから彼女が残業する日は、自動的に俺も会社に居残りせざる得なかった。 しかしお嬢様という物は、動物園や水族館の生き物より不思議な生き物である。

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