【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「白鳥さん、素敵なお店に連れて行って下さった上にご馳走にまでなってしまって、ありがとうございます!
すっごく美味しかったです!それに立ってご飯を食べるのも初めてでしたし、トッピングが無料なのも感動しましたわ!」
「いえいえ、全然。ルナさんが気に入って下さったなら、嬉しいです。」
今時破格の、蕎麦一杯300円だ。 それにここまで喜んで貰えると、こんな俺でも心がちくりと痛む。
こいつマジで言ってんのか?無理してんじゃねぇか?そうは思ったけれど、俺の少し先を歩くルナは鼻歌を歌いながら、とてもご機嫌だ。
余りにもご機嫌に空を眺めて歩いているものだから、何もない歩道で躓いて、転びそうになる。
「危ない!」
後ろから腰を支えるように手を回すと、ふんわりと甘い香りが髪から香った。
確かに同じ家に住んで、同じシャンプーを使っているはずなのに、何故この女からはこんなに良い匂いがするのだろうか。
華奢で細い腰を掴むと、思わず胸がドキドキしてしまう。妙な色気がある女だ。それを本人が自覚していないから質が悪い。