【完】嘘から始まる初恋ウェディング
「ありがとうございます。 私ったら、ドジで」
「ちゃんと前を向いて歩かないと、危ないですよ?」
にこりと作り笑い。 ルナは俺の腕を掴んだまま、茶色の大きな瞳を輝かせながらこちらを見上げる。
太陽の光で、唇のピンク色のグロスが透明に光る。 この女は全くタイプではないし、出来る事ならば避けて通りたい女の典型例だ。
だが、可愛いものは可愛い。 そして俺の様な人間には、本来であるならば到底釣り合いの取れない極上の女だ。
けれど見つめ合った先、ルナが頬を赤らめながら顔をくしゃくしゃにして笑うから、不思議な気持ちになっていく。
その時だった。
「ん?!」
「どうしました?白鳥さん…」
「今、シャッター音が聴こえたような」
きょろきょろと辺りを見回して見たけれど、行き交う人の群れの中に怪しげな人間は見つけられなかった。
「シャッター音?」
「いえ、気のせいならばいいのですが…」