乙女チック同盟~私と学園の王子様のヒミツの関係~
3.乙女チック同盟
だけど、現実の男子には関わりたくない、という思いもむなしく、数日後、私は生徒玄関口の前で再び八乙女くんから声をかけられた。
「おはよう、若菜さん」
「あ、おはよう、八乙女くん」
靴箱からうわばきを取り出しながら答える。
八乙女くん、相変わらず整った顔だなあ。色素のうすい前髪に朝日が透けてキレイ。
「今、ちょっといい?」
「うん」
八乙女くんに呼び出され、ひとけのない職員玄関のほうへ二人で歩いていく。
女子がヒソヒソと何かを話してるのが分かった。
八乙女くんはキョロキョロと辺りを見まわすと、カバンから私が先週貸した本を取り出した。
「これ、ありがとう」
「いえ、どういたしまして」
私が本を受け取りカバンに入れると、八乙女くんは急に何やらソワソワし始めた。
「その――えっと」
八乙女くん、どうしたんだろ。
「それでなんだけどさ……若菜さんはどう思った?」
「へ??」
どうって?
私が首をかしげていると、八乙女くんは顔を真っ赤にして視線を落とした。
「それはえっと、この本の感想というか」
ああ、そういうことか!
八乙女くん、この本の感想を語り合いたかったんだ。
「ああ。えっと、前の和風のやつより好みかな。最後の舞踏会のシーンがロマンチックで」
「そうそう! あそこすごい良いよな!! すげーロマンチック!!」
私の感想にものすごい勢いで食いつく八乙女くん。
私がキョトンとしていると、八乙女くんはハッとした顔をして辺りを見回し、再び声のボリュームを落とした。
「あれ、いいよね」
「うん」
こんなに興奮しちゃうなんて、八乙女くん、よっぽどあの本が気に入ったんだな。
クールな男の子だと思ってたのに、なんかビックリ。