棘甘王子に現行犯逮捕されちゃいました ゾルック 三人目
今日の昼休みも
千柳さんのノロケ話に、
付き合わされるんだろうなぁ。
諦めのため息を吐き
お弁当入りのカバンを肩にかけ、
教室を出た瞬間。
「天音君、今日も千柳様のとこ?」
「理事長室の前まで、
一緒に行ってもいい?」
案の定、女子たちに囲まれてしまった。
は~。
この子たちが全員
ツインテを揺らす
りんりんだったらいいのに。
な~んて、無意味な願望を抱く
へたれな自分に、がっかり。
『ファンは神様』
『神様には感謝』
アイドルレッスンのたび、
マネージャーに叩き込まれる言葉を
頭の中で繰り返し。
「僕を送ってくれるの?
みんな、ありがとう」
童話の王子様風に、ニコっ。
理事長室まで歩き出した。