想妖匣-ソウヨウハコ-
学校の近く、裏道を秋は両耳を抑えながら無我夢中に走っていた。草木が沢山生い茂っているため、手や足に切り傷を作っているが今はそのような痛みなど感じていないほど取り乱している。
そんな彼女の目からは、涙がとめどなく流れていた。
「違う、違う!! 違う!!!!」
頭にこびり付いている周りの声。自分が否定されている声、感情。批判的な目、すべてを否定するように秋はそう叫びながらデタラメに走っていた。
「どうしてどうしてどうして……」
”どうして”と。誰にも届く事はない問いかけを呟き続ける。だが、周りには誰もいないため、問いかけに答える声は返ってこない。
それでも呟きながら無我夢中で走っていると、前回麗と一緒に行った噂の小屋に辿り着いていた。
「はぁはぁ、なんで私……。ここに」
秋は肩で息をしながら、目の前に突如出てきたような小屋を見上げる。来る気がなかった彼女は、この後どうすればいいのかわからず。眉を顰めながら周りを見回していた。その時、小屋のドアが音を鳴らし開かれる。
「え?」
開かれたドアの方を向くと、小学校低学年くらいの少年が不機嫌そうな顔を浮かべ立っていた。
彼女はいきなり出てきた少年、カクリから目が離せず凝視してしまっていると、数秒後。怒っているような声色で、カクリが秋を部屋の中に促した。
「どうぞ」
短く、一言だけ。カクリは口にし、秋は困惑の表情を浮かべるのみ。疲労で思考が動かず、いきなりの出来事で体を動かす事が出来ない。
ドアの隙間から覗いているカクリを見ているのみ。その視線が鬱陶しいカクリは眉間に皺を寄せ、秋を見上げる。そして、諭すように鈴の音の声で話しかけた。
「入らないの? 開けて欲しいんじゃないのかい?」
「あ、開けて欲しい? 何を──」
「君の心に潜む黒い匣、開けたいのなら入ってくるが良い」
そんな言葉を残し、カクリはドアを閉め小屋の中へと姿を消した。
残された秋は「えっ、えっ?」と。あわあわと手を意味も無く動かし、再度小屋を見上げた。その瞳には強い思いが込められ、横に垂らした手に力が込められる。
「────入るしか、ないよね」
そんな彼女の目からは、涙がとめどなく流れていた。
「違う、違う!! 違う!!!!」
頭にこびり付いている周りの声。自分が否定されている声、感情。批判的な目、すべてを否定するように秋はそう叫びながらデタラメに走っていた。
「どうしてどうしてどうして……」
”どうして”と。誰にも届く事はない問いかけを呟き続ける。だが、周りには誰もいないため、問いかけに答える声は返ってこない。
それでも呟きながら無我夢中で走っていると、前回麗と一緒に行った噂の小屋に辿り着いていた。
「はぁはぁ、なんで私……。ここに」
秋は肩で息をしながら、目の前に突如出てきたような小屋を見上げる。来る気がなかった彼女は、この後どうすればいいのかわからず。眉を顰めながら周りを見回していた。その時、小屋のドアが音を鳴らし開かれる。
「え?」
開かれたドアの方を向くと、小学校低学年くらいの少年が不機嫌そうな顔を浮かべ立っていた。
彼女はいきなり出てきた少年、カクリから目が離せず凝視してしまっていると、数秒後。怒っているような声色で、カクリが秋を部屋の中に促した。
「どうぞ」
短く、一言だけ。カクリは口にし、秋は困惑の表情を浮かべるのみ。疲労で思考が動かず、いきなりの出来事で体を動かす事が出来ない。
ドアの隙間から覗いているカクリを見ているのみ。その視線が鬱陶しいカクリは眉間に皺を寄せ、秋を見上げる。そして、諭すように鈴の音の声で話しかけた。
「入らないの? 開けて欲しいんじゃないのかい?」
「あ、開けて欲しい? 何を──」
「君の心に潜む黒い匣、開けたいのなら入ってくるが良い」
そんな言葉を残し、カクリはドアを閉め小屋の中へと姿を消した。
残された秋は「えっ、えっ?」と。あわあわと手を意味も無く動かし、再度小屋を見上げた。その瞳には強い思いが込められ、横に垂らした手に力が込められる。
「────入るしか、ないよね」