想妖匣-ソウヨウハコ-
先程と同じ台詞だが、先程とは雰囲気がまるで違う。
目は鋭い眼光ではなく、優しい瞳。口元にはまだ、柔らかい笑みを浮かべていた。
秋はその質問に対しすぐに答えず、顔を俯かせる。その様子に、明人は急かす事などは一切せず、ただひたすらに待ち続けた。
明人の誘いに心が揺らぎ、だが記憶を取られると考え迷っている。今後自分がどうなってしまうのかわからない恐怖があり、すぐに頷く事が出来ない。それでも、なぜか断る事も出来ず、俯くのみ。
考えた末、やはり今後どうなるかわからない賭けに乗るのはリスクがある。断ろうと顔を上げ、口を開いた。その時、明人の漆黒の瞳と目が合う。
心の底にある、秋自身気づいていない思いまでも見透かしているように感じ言葉がのどに詰まる。
「ゆっくり、考えてください」
明人の唇が動く。やわらかく妖艶な声に頭がくらくらしてきた。思考が回らなくなり、体から力が抜ける。その時、秋の頭に今までの出来事がフラッシュバックし始めた。
急に顔を青くし、体をビクッと震わせた。
「…………お願いします。私の匣、開けてください!!」
「かしこまりました。貴方の匣、閉じられた想いを、今ここで開けてみせます」
ここで動かなければ今までと同じ。都合よく扱われ、麗とはぎくしゃくしたまま。それに加え、今回の件でバスケ部に居られない可能性だって出てくる。それを思い、秋は決意を固め明人と目を合わせ宣言した。
力強い瞳を向けられ、明人は先程より妖しい笑みを浮かべる。そのまま流れるように立ちあがり、部屋の奥にあるドアの中に姿を消した。そんな彼の後姿を見届け、秋は緊張の糸が切れ息を吐く。天井を見上げ、疲労の顔を浮かべる。
息を吐き落ち着いていると、ソファーが傾き横を向く。そこには秋を部屋の中に招いたカクリが座っていた。
思わずカクリを見ていると、視線がうるさく感じたカクリは目を合わせず冷ややかに言い放つ。
「なに。隣に座ったらダメだったのかい? ここ、君の家じゃないと思うのだけれど」
見た目とは裏腹に冷たい言葉。秋は面食らい、瞬きを繰り返す。
何でここにカクリみたいな子供がいるのかわからず、秋は体を少し乗り出し問いかけた。
「えっと、君はなんでここに居るの? お母さんとお父さんは?」
「私の事を子供だと思っているのかい? 言っておくけれど、私は君より年上だよ。勘違いしないでくれないか」
秋はカクリの物言いように、苦笑いするしか出来なかった。だが、いい放たれた言葉に疑問を抱き、困惑の声を上げる。
「……あれ? 今、私より年上って……」
「そう言ったけれど、何か変かい?」
「変も何も、貴方どう見ても小学生じゃない」
「見た目で判断するのは人間の悪い癖だが、君の場合は決めつけだね」
目を合わせず、カクリはいつの間に準備していた珈琲に口を付けた。
秋は子供が普通に珈琲を飲んでいる姿を目にし、思わず凝視する。驚きと困惑で何も口に出来なくなってしまった。
「そ、それじゃ貴方は一体何者なの?」
何とか気を取り戻し、秋は質問した。だが、返答はない。
「ちょっ、聞こえて──」
少しイラついた口調で、聞こえてないのと口にしようとしたが、先程明人が出て行ってしまったドアが開かれてしまい口を閉ざす。
目は鋭い眼光ではなく、優しい瞳。口元にはまだ、柔らかい笑みを浮かべていた。
秋はその質問に対しすぐに答えず、顔を俯かせる。その様子に、明人は急かす事などは一切せず、ただひたすらに待ち続けた。
明人の誘いに心が揺らぎ、だが記憶を取られると考え迷っている。今後自分がどうなってしまうのかわからない恐怖があり、すぐに頷く事が出来ない。それでも、なぜか断る事も出来ず、俯くのみ。
考えた末、やはり今後どうなるかわからない賭けに乗るのはリスクがある。断ろうと顔を上げ、口を開いた。その時、明人の漆黒の瞳と目が合う。
心の底にある、秋自身気づいていない思いまでも見透かしているように感じ言葉がのどに詰まる。
「ゆっくり、考えてください」
明人の唇が動く。やわらかく妖艶な声に頭がくらくらしてきた。思考が回らなくなり、体から力が抜ける。その時、秋の頭に今までの出来事がフラッシュバックし始めた。
急に顔を青くし、体をビクッと震わせた。
「…………お願いします。私の匣、開けてください!!」
「かしこまりました。貴方の匣、閉じられた想いを、今ここで開けてみせます」
ここで動かなければ今までと同じ。都合よく扱われ、麗とはぎくしゃくしたまま。それに加え、今回の件でバスケ部に居られない可能性だって出てくる。それを思い、秋は決意を固め明人と目を合わせ宣言した。
力強い瞳を向けられ、明人は先程より妖しい笑みを浮かべる。そのまま流れるように立ちあがり、部屋の奥にあるドアの中に姿を消した。そんな彼の後姿を見届け、秋は緊張の糸が切れ息を吐く。天井を見上げ、疲労の顔を浮かべる。
息を吐き落ち着いていると、ソファーが傾き横を向く。そこには秋を部屋の中に招いたカクリが座っていた。
思わずカクリを見ていると、視線がうるさく感じたカクリは目を合わせず冷ややかに言い放つ。
「なに。隣に座ったらダメだったのかい? ここ、君の家じゃないと思うのだけれど」
見た目とは裏腹に冷たい言葉。秋は面食らい、瞬きを繰り返す。
何でここにカクリみたいな子供がいるのかわからず、秋は体を少し乗り出し問いかけた。
「えっと、君はなんでここに居るの? お母さんとお父さんは?」
「私の事を子供だと思っているのかい? 言っておくけれど、私は君より年上だよ。勘違いしないでくれないか」
秋はカクリの物言いように、苦笑いするしか出来なかった。だが、いい放たれた言葉に疑問を抱き、困惑の声を上げる。
「……あれ? 今、私より年上って……」
「そう言ったけれど、何か変かい?」
「変も何も、貴方どう見ても小学生じゃない」
「見た目で判断するのは人間の悪い癖だが、君の場合は決めつけだね」
目を合わせず、カクリはいつの間に準備していた珈琲に口を付けた。
秋は子供が普通に珈琲を飲んでいる姿を目にし、思わず凝視する。驚きと困惑で何も口に出来なくなってしまった。
「そ、それじゃ貴方は一体何者なの?」
何とか気を取り戻し、秋は質問した。だが、返答はない。
「ちょっ、聞こえて──」
少しイラついた口調で、聞こえてないのと口にしようとしたが、先程明人が出て行ってしまったドアが開かれてしまい口を閉ざす。